風景画 考え事をするとき、 何も考えたくないとき、 家の近くの河原歩く。 それは、 混乱した状況の私を心配した人達の アドバイスで始めた習慣だ。 短ければ30分、時には2時間歩き続ける。 休日の河原は、 幸せな日常の時間で満ちている。 犬の散歩をしている人、芝生の上で遊んでいる親子、 少年野球、テニスを楽しむ人達。 楽器や歌の練習をする人達もいる。 でも、そこは、死が身近にある場所だ。 川遊びで流されてしまった子供。 親子連れがお弁当を食べている河原の隅には、 黄色いテープが貼られている。 川を横断するJRの踏切には、毎月のように 飛び込み自殺がある。 ここでは、死も日常の出来事だ。お 私は、幸せな風景の中を、 生と死の両方の気配を感じながら 河原を歩く。 何の変哲もない河原だけど、 少しずつ季節が移り変わっていく。 心を揺さぶる圧倒的な美しさはないけれど、 心が和む小さな美しさがある。 その小さな美しさの中、 私は、生と死の両方の気配を感じながら 歩いていく。 |